プロポーザル型公募とは、官公庁が主体となる公共事業の募集方法の一つです。通常の公共事業は、あらかじめ国や自治体に事業者登録している業者しか応募できませんが、プロポーザル型公募は条件さえそろっていれば誰でも参加できます。
応募資格を見てみるとだいたい次のような条件になります。
当然大きな事業には大きな資金的余裕がないといけないので、小さな事業者は小さな公共事業を狙うことになると思いますが、それでも入札資格がいらない分、参加のハードルはかなり低いと思って良いでしょう。
しかし、裏をかえすとそれだけ競争が激しいということにもなります。挑戦してみたは良いけれど、まったく採用されないという会社は、やはり何か理由があります。ここでは、そもそも競争をするためのスタートラインともいうべき要素を挙げていくことにします。
公共事業ですから、最終的には官公庁がお金を払うことになりますが、それは事業が終わってからになります。それまでは自費でやりくりする必要があるので、3,000万円かかる事業であれば3,000万円用意しておく必要があります。
事業が終わればお金は確実に入ってくるので、銀行融資で何とかできればお金の準備はできそうです。実際に融資を使っても参加できないということはありません。一時的に負債が増えるので、その分の資本金や利益剰余金が十分に積まれていれば、銀行も貸してくれるでしょう。1年以内の事業が多いので、短期融資で対処しても良いかもしれません。
ただ、1点気を付けないといけないのは、プロポーザル型公募で採用されても即契約ということにならないということです。形式的ではありますが、プロポーザル型公募で選定された事業者は、官公庁と契約交渉をする権利を得るだけです。実際の契約は選定後に契約書を交わすことで成立します。当然契約が交わせないこともありますし、契約書には契約解除の条項も含まれています。
もし何らかの事情で事業ができなくなった場合、契約は解除されて借金だけが残ることになります。元本を返せば損金は利息だけになりますが、万が一のことは考えておくべきでしょう。
公共事業といってもピンからキリまであります。小さな事業であれば何百万くらいの募集もあるので、わざわざ背伸びして大きな事業を狙う必要はありません。自社資金でまかなえる事業であれば事業の遂行にも余裕ができます。
また、借金で企画競争に参加しても、不利になることは言うまでもありません。プロポーザル型公募はいくつかの項目を点数制にして合計点の高い事業者を選定することになっています。時には1点2点の差で事業者が決まることもあるので、できれば自社の資金内で収まる公募にチャレンジするべきです。
募集条件には「事業を的確に遂行することができる」という項目が必ずと言って良いほど含まれています。これは、社員を何人雇っているかとか、資格や能力といった部分もありますが、似たような事業をいくつ経験しているかということがかなり影響してきます。
応募企業は、必ず「関連事業の実施履歴」を書くことになっています。その時に関連性の薄い事業を書いたり、ほとんど書かなかったりすると、ほぼ確実に落とされるでしょう。
事業の経験は、できれば官公庁相手の事業を書くのが理想です。それ以外だと民間の事業実績を書くことになりますが、その場合は実施内容を細かく書いておくことが良いでしょう。
官公庁の事業は失敗がゆるされないため、確実性が重視されているようです。そのため、関連事業の実績には配点が寄せれられているパターンもかなりあります。
こういうことからも、官公庁を相手にした小さな事業をコツコツ積み上げることも大切なことなのです。
プロポーザル型公募では、募集要項が必ず公開されます。そして、そのはじめには事業の目的が必ず記載されています。この目的は企画書や報告書にも記載する内容で、最も重要な部分と言っても良いでしょう。
この目的に合致した企画を競争させるのですが、そんなの当然と思う人もいるでしょう。しかし、ことはそんなに単純なものではありません。
事業の中にはかなり細かなところまで書いている案件がありますが、その背景に当たる内容まで把握しておかないと正確に理解できない可能性があります。こういう場合は、文章の中に「〇〇委員会」や「〇〇ガイドライン」といった用語があれば、そのキーワードで検索して、中身を読んでおくべきです。
委員会であれば、たいてい議事録や決定内容が公開されています。そして、長期的な展望などが記載されていることが多いため、募集している事業の全体像を把握する助けになります。
基本的に、官公庁の事業は単発ではなく、5年なり10年なりのスパンを持ったものです。ただ、発注スパンは単年度の計算になるので、1年の事業として募集することになります。そして、1年間で達成する目標を事業の目的として記載しているパターンが多いので、単発の事業と考えてしまうと、大きな失敗をしてしまう可能性があるのです。
大切なのは事業の全体像を把握することと、事業の裏側にあるトレンドを理解することです。国会や自治体の議会でだいたい何らかの議論があるので、それを確認しておくことがポイントです。
募集要項には実施項目なり実施内容が記載されています。募集要項にない場合は、仕様書に記載があるでしょう。だいたい箇条書きになっているのでわかりやすいと思います。事業では、これらすべての要求項目を満たしておく必要があります。
そして、追加の提案があれば書くことと、だいたいあちこちに書いているので、要するに要求項目をすべて満たしたうえで、さらに追加提案をちょうだいと要求しているわけです。
といっても、予算が限られている以上、要求項目すべてに全力を出すわけにはいきません。当然要求項目には優先順位があり、重要なところに予算をかけるのが本筋でしょう。ちなみに、説明会で優先順位を聞いても、教えてくれることはあまりないでしょう。これは事業の目的からある程度類推していくしか方法はありません。(実施主体の担当者と仲良くなるという方法はありますが、ここでは除外しておきます。)
そういう意味でも、事業の目的を正確に把握しておくことは重要になってくるということです。
追加提案は、企画の点数を挙げるための大切な要素です。だからと言って、何でも追加すれば良いわけではなく、意味を持たせることで初めて評価につながります。
まずは、追加提案であることをしっかりと書きます。要求項目を満たすための提案と混同しないためなので、赤字で目立つように書いておきましょう。
そして、追加提案によってどんな効果が得られるのかを書きます。効果は事業の目的を補完するものでなければ評価の対象外になる可能性が高いため、必ず事業の目的と連動させておきます。どのように連動させるかは企画の腕の見せ所でしょう。
予算配分は各実施項目の優先順位が高い順になりますが、それだけで予算配分をしてはいけません。基本的には予算に関する配点はそれほど高くない場合が多いので、予算を極端に下げる必要はありません。また、安いのが良いというわけでもないので、予算の削減はあまり意識しなくて良いでしょう。問題は別にあります。
限られた予算の中で要求項目をすべて十分に満たすことはかなり困難です。つまりある程度切り捨てることも大事だということです。
また、実施主体が途中から仕様を変更する可能性もあります。もちろん追加予算はなしです。そういうリスクを踏まえると、それぞれの要求項目にかけられる予算はかなり限られてしまいます。
そのため、全体の収益を10%程度に見込むと、最終的に赤字といったことにもなりかねません。予算にはある程度余裕をもって当たったほうが無難です。そう考えると、利益率は15%を見込み、さらに全体予算(材料費は除きます)の10%程度を管理費として計上しておくほうがよいでしょう。
なお、予算配分は後付けで帳尻を合わせれば良いというわけではなく、ある程度当初予算の範囲ないで納めなければなりません。人件費がオーバーして外注費が大幅に余った、などということが起こらないよう、事前にしっかりと計算しておくことが重要です。
最後は企画の具体性です。どのくらい具体的なのかというと、企画書が事業進行の資料になる程度です。
たとえば誘客のための手法として、チラシをまくことを考えたとしましょう。このとき、チラシのデザインはほぼ完成形にしておいたほうが良いでしょう。それから印刷枚数やサイズはもちろん、配架予定箇所や配架予定時期も具体的に記載しておきます。当然、配架許可が下りませんでしたでは話にならないので、配架予定先には必ず確認をしておく必要があります。
近年、この具体性がかなり重視されるようになってきました。予定の変更は基本的にNGです。下手をすると契約不履行とみなされることにもなりかねません。できることを確認したうえで、細かな部分まで記載することが重要です。
これについては企画の具体性 どこまで書けばいいのか?にも書いていますので、参考にしてください。
企画競争は勝ち負けがはっきりします。勝つときは勝つし、負けるときは負けます。しかし、何を反省すれば良いかわからないままに負け続けるのはあまり賢い選択とは言えません。
求められていることをしっかりと把握したうえで、何度もチャレンジすることで、きっと良い結果が生まれることと思います。
未来文書に相談してみませんか?