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会社の外の変化を整理するPEST分析 – Eをもっと深く知る

E:お客さまのお金の使い方と、自社にかかる費用を見る

「売上は去年と同じくらいなのに、利益が減っている」

「値上げをしたら、売上金額は戻ったものの、売れる数は減っている」

こんな時に分析するのがPEST分析ですが、今回はE:Ecnomyの視点を深堀します。

PEST分析のEは「経済」です。景気や物価、金利、為替など、会社の外のお金の動きが、自社やお客さまにどう影響しているかを見る視点です。

前回のPでは、商売のルールや行政の方針を見ました。今回のEでは、「お客さまが何にいくら使うようになったか」「同じ商品を売るのに、いくらかかるようになったか」を考えます。

なぜEを見る必要があるのか

同じ売上でも、手元に残る利益は変わるから

例えば、仕入価格が上がっているのに、販売価格を据え置いていれば、同じ数を売っても利益は減ります。さらに、電気代や配送費が上がれば、商品を仕入れて売るまでにかかる費用も増えます。

この状況で売上を戻そうと特売を増やしたら、どうなるでしょうか。売れる数は増えても、値引きによって一つ売るごとに残る利益が減り、店全体では利益が改善しないこともあります。

売上が伸びないのか、売っても利益が残らないのか。まずは、どちらが問題なのかを確かめる必要があります。

お客さまが同じ商品を、同じ量だけ買うとは限らないから

食費や光熱費などの負担が増えると、お客さまは家計の中で何を優先するかを考えます。買う回数を減らす人もいれば、買う回数は変えず、手頃な商品に切り替える人もいます。

会社がお客さまの場合も同じです。取引先が設備投資を先送りすれば、新品の受注は減るかもしれません。その一方で、今ある設備を長く使うための修理や点検の相談は増えるかもしれません。

売上が落ちているときは、「お客さまが減ったのか」「同じお客さまの買い方が変わったのか」を分けて考えると、調べることが絞れます。

利益が出ていても、支払いに使えるお金が減ることがあるから

仕入単価が上がると、同じ数量を仕入れるにも、これまで以上のお金が必要になります。仕入代金を払ってから売上代金が入るまでに時間がかかる会社では、その間の資金も用意しなければなりません。

借入条件が変われば、支払う利息も変わります。設備の更新や仕入れの見直しを考えるときは、利益の見込みに加えて、いつ、いくら支払いが発生するかも確認しましょう。

Eに当たる事例

Eに当たる事例は、仕入れ原価や販売価格だけではありません。お客さまが買い控える原因となることや決済方法の多様化、

 

会社の外で起きる変化 関係しやすい企業 自社について考えること
食料品や日用品の値上がりで、家計の負担が増える スーパー、飲食店、小売店 来店回数、買う点数、選ばれる価格帯のどれが変わったか
住宅の購入費やローン負担が増え、買い替えを見送る人が増える 家具店、家電店、住宅関連業 新居向けの注文が減っているか。今の住まいで使う商品の需要はどうか
取引先が設備投資を先送りする 機械販売、製造業、工事業 新規受注が減る一方で、修理や保守の相談は増えていないか
地域の主要産業で受注が減る 部品メーカー、運送業、周辺の飲食店 受注量や来店客数が、特定の企業や業界の動きに左右されていないか
宿泊費や交通費が上がり、旅行予算の配分が変わる 宿泊、飲食、土産物店 来訪者数と、来訪者一人当たりの購入額のどちらが変わったか
原材料の仕入価格が上がる 食品製造、飲食、建設、製造業 どの商品や案件の利益が減ったか。価格や見積もりを見直す必要があるか
包装資材の価格が上がる スーパー、食品製造、通販 小容量化や個包装で、商品一つ当たりの費用がいくら増えるか
電気・ガス料金が上がる スーパー、工場、宿泊施設 冷蔵・空調・製造のどこで費用が増えているか
燃料費や運賃が上がる 運送業、卸売、配達を行う小売店 配送先や便ごとに、いくら費用がかかり、いくら利益が残るか
地域の採用時給の相場が上がる 小売、介護、飲食、製造業 募集条件を変えた場合、人件費と必要な人員を確保できるか
円安で、輸入品や輸入原料の円建て価格が上がる 輸入販売、食品製造、部品加工 自社が直接輸入していなくても、仕入先を通じて影響が出ていないか
為替が動き、海外のお客さまから見た日本製品の価格が変わる 輸出企業、海外向けの通販 受注の増減に加え、契約通貨や入金時の為替が利益にどう影響するか
借入金利が上がる 借入のある企業、設備更新を計画する企業 既存の借入や新規の借入で、利息と毎月の支払額がどう変わるか
取引先の資金繰りが悪化する 掛け売りの多い卸売、製造、建設業 入金の遅れが出ていないか。特定の取引先への売掛金が増えていないか
決済手段の多様化 小売業 入金までのタイムラグや決済手数料、競合の導入割合など

同じ人件費の増加でも、最低賃金の改定という制度の変化はP、地域の採用相場の上昇はEです。分類は、費用の名前ではなく、何がその変化を引き起こしたかで考えます。

地元の自動車整備工場なら、何を確かめるか

ある自動車整備工場では、長年付き合いのあるお客さまから、車検や修理を受けています。入庫台数は大きく減っていませんが、以前ほど利益が残らなくなっています。

経営者は「もっと仕事を取らなければ」と考えています。しかし、忙しさが増えても利益が増えないのであれば、まずは今の仕事で何が起きているかを確かめる必要があります。

ここでは、架空の数字で考えてみましょう。

ある修理について、前年は部品の仕入れに2万円、作業に2時間かかり、お客さまに4万円を請求していました。今年は同じ部品の仕入価格が2万5千円になりましたが、請求額は4万円のままです。

この場合、請求額から部品代を引いた残りは、2万円から1万5千円に減っています。ここから整備士の人件費や工場の維持費などを賄うため、同じ仕事を同じ件数こなしても、利益は減ってしまいます。

まずは、よく受ける整備や修理について、部品代、作業時間、請求額を並べてみます。仕入価格が変わったのに、見積もりの基準が以前のままになっていないかを確かめます。

お客さまが修理に使うお金も見てみる

同時に、お客さまの判断にも目を向けます。

例えば、「今回は必要な修理だけにしたい」「買い替えは難しいので、今の車をもう少し長く使いたい」という相談が増えているかもしれません。

そこで、見積もりを出した後に断られた作業や、先送りになった整備を記録します。理由も聞ける範囲で確かめると、金額が負担になっているのか、必要性が十分伝わっていないのかを考える材料になります。

安全に関わる整備は、その必要性と先送りによる影響を説明します。そのうえで、緊急性の低い作業については、実施時期や費用の見通しを相談できるようにします。

受注件数と、一件ごとの採算を合わせて考える

確認した結果、部品代の上昇が利益を圧迫しているなら、見積もりに使う部品価格を更新し、工賃も作業時間に見合っているかを見直します。

また、買い替えを見送り、長く乗り続けたいお客さまが多いなら、車の状態に応じた点検や整備計画を提案することも考えられます。

ただし、提案を増やすには整備士の時間が必要です。予約の取り方や部品の手配を見直し、限られた人数で対応できるかも確かめます。

Eの視点で、仕入価格とお客さまの予算の両方を見ると、「仕事を増やす」という方針を、どんな仕事を、どの価格で、どれだけ受けるかという判断まで具体化できます。


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