公募への挑戦を貴社の成長資産に変える。 企画書制作から事務局運営まで、実務に徹する『自治体業務の伴走支援

「いつもの商売」が変わってきたと感じたら – 会社の外の変化を整理するPEST分析

事業の継続と発展は、企業にとって大事な課題の一つです。

長年、地元のお客さまに支えられながら商売を続けてきた。しかし、ここ数年は売上が落ちている。売上は維持できていても、仕入れや人件費が上がり、年々利益が減っている。今販売している商品やサービスが、この先も売れ続けるのか、見通しがつかない。そう感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

売上を戻そうと営業に力を入れたり、新しい設備を導入したりしても、思うような成果につながらない。何とかしなければと思いながら、次に何をすればよいのか決めかねていることもあるでしょう。

そんなときに必要なのが、今起きていることを整理し、その理由を考えるための「分析」です。ただ、分析方法は数多くあります。とりあえず手をつけてみたものの、「この結果から、何を考えればよいのか」と迷ったことはありませんか。

分析手法には、それぞれ役割があります。自社を取り巻く変化を捉えるもの、お客さまや競合を調べるもの、自社の強みや弱みを整理するもの。それらを関連付けて考えることで、業績が振るわない背景や、取り組むべき課題が見えやすくなります。

そこで、基本的な分析手法を取り上げながら、自社の現状を整理し、これからの経営にどう生かすかを考えていきます。

分析の流れを知る

最初にすることは、分析の流れを知ることです。よさそうな分析を一つ拾ってやってみても、その結果をどう使えばよいか分からなければ、自社の戦略には結び付きません。そこで、まずは分析の流れを全体像で見てみましょう。

マーケット全体を見る
↓
自社の立ち位置を見る
↓
顧客との関係性を見る
↓
自社の戦略を練る

まずは、市場や社会で何が起きているか、全体を見ます。次に、その中で自社がどのような立場にあり、競合と比べてどんな強みや弱みがあるかを考えます。

そして、お客さまが何を求め、なぜ自社の商品やサービスを選んでいるのか、あるいは選ばなくなっているのかを確かめます。

ここまでを踏まえて、誰に何を提供し、そのために何に取り組むかという、自社の戦略を練っていきます。

分析は、項目を埋めることが目的ではありません。経営の判断に使うためのものです。まずは全体の流れをつかみ、そのうえで自社の課題に応じて必要な分析を選んでいきましょう。

PEST分析とは

PEST分析は、自社の外で起きている変化を、四つの視点で整理する方法です。「ペスト分析」と読みます。市場を見るうえで、もっとも基本的な分析方法の一つです。

売上や利益が減っているとき、商品の品質や営業のやり方など、自社の中に原因を探すことは多いでしょう。しかし、お客さまの暮らしや制度、技術などが変わったことで、これまでの商売が合わなくなっている場合もあります。

その変化を整理するために使うのが、次の四つの視点です。

視点 考えること 身近な例
P:政治・制度(Politics) 法律や行政の制度などが、商売にどう影響しているか 許認可、税制、補助金、労働に関する制度
E:経済(Economy) 景気やお金の動きが、売上や経費にどう影響しているか 仕入価格、人件費、金利、為替、消費の動向
S:社会(Society) 人口や暮らし方、価値観がどう変わっているか 高齢化、人口減少、世帯構成、働き方、購買習慣
T:技術(Technology) 技術の変化が、商品の選ばれ方や仕事の進め方をどう変えているか ネット通販、予約システム、キャッシュレス決済、省力化設備

英語の頭文字を並べると難しそうですが、考えたいのは「会社の外で何が変わり、それが自社の商売にどう関係しているか」です。

例えば、商品の売上が落ちているとしても、お客さまの数が減ったのか、使う場面が減ったのか、別の買い方が広がったのかで、対応は変わります。まずは、その背景に目を向けてみましょう。

PEST分析の使い方

1.今、困っていることを一つ決める

最初から世の中の変化をすべて調べようとすると、情報を集めるだけで終わってしまいます。まずは、自社が何に困っているのかを具体的にします。

「会社の将来が不安」よりも、「主力商品の売上が3年続けて減っている」「売上は変わらないのに利益が減っている」の方が、調べることを絞れます。

会社全体では広すぎる場合は、一つの商品や店舗、事業に絞っても構いません。

2.四つの視点で、関係しそうな変化を書き出す

次に、決めた課題に関係しそうな変化を、政治・制度、経済、社会、技術の四つに分けて書き出します。

経営者一人で考えるよりも、営業、製造、経理、店頭など、立場の異なる人から話を聞くと、見えていなかった変化に気付くことがあります。

ただし、「最近のお客さまは価格に厳しい気がする」といった実感と、確認できた事実は分けておきましょう。実感は調べるきっかけになりますが、それだけで原因を決めてしまうと、対応を誤ることがあります。

自社の売上記録や仕入明細、お客さまの声に加え、地域の人口統計や行政の公表資料なども確認します。

なお、一つの変化が複数の項目に関係することもあります。どこに分類するかで悩むより、自社との関係を考えることが大切です。

3.自社にどんな影響があるかを考える

変化を書き出したら、その横に「自社にとって何が起きているか」を書きます。

例えば、「地域の高齢化が進んでいる」だけでは、経営の判断にはつながりません。

「大きな商品を持ち帰りにくいお客さまが増えているのではないか」「一度に買う量が減っているのではないか」と、自社の商品や売り方に結び付けて考えます。

同じ変化でも、会社によって影響は異なります。高齢化によって来店客が減る店もあれば、配達や訪問サービスの需要が増える会社もあります。変化そのものを、単純に良い・悪いと決めないことも大切です。

4.影響の大きいものから、確認と対応を進める

すべてに一度に対応する必要はありません。売上や利益への影響が大きいもの、すでに影響が出ているものから優先して考えます。

そのうえで、「何を確かめるか」「確かめた結果によって何をするか」を決めます。

例えば、少人数世帯の増加が販売不振に関係していると考えたなら、購入数量の変化を調べたり、常連のお客さまに量について聞いたりします。それを踏まえて、小容量の商品を試すという流れです。

分析の段階で思い付いた案は、まだ仮説です。大きな投資を決める前に、小さく試して反応を見ることで、判断の材料を増やせます。

PEST分析で何が分かるのか

PEST分析によって見えてくるのは、今の売上や利益に影響している可能性がある「外部環境の変化」です。

これまで「営業の頑張りが足りない」と考えていた問題でも、お客さまの人数や買い方が変わっているのであれば、営業活動だけでは改善しにくいかもしれません。商品、販売先、売り方などを見直す必要が見えてきます。

また、困りごとの原因になっている変化の中に、新しい商売の機会が見つかることもあります。来店が難しい人が増えているなら、配達への需要があるかもしれません。人手不足に悩む取引先が多いなら、取引先の手間を減らすサービスが選ばれる理由になるかもしれません。

ただし、PEST分析だけで売上減少の原因が確定したり、次に売れる商品が決まったりするわけではありません。

分かるのは、どの変化に注目し、次に何を調べるべきかです。お客さまや競合の状況、自社の採算や対応できる範囲も確認しながら、具体的な取り組みにつなげていきます。

事例:地元の食品製造・販売会社で考える

ここでは、架空の食品製造・販売会社を例に考えてみましょう。

この会社は、地元で長年、惣菜を製造し、店頭で販売しています。看板商品は家族向けの大容量パックで、地域の常連客に親しまれてきました。

ところが、ここ数年は販売数量が減っています。原材料や包装資材の値上がりも重なり、利益も減っています。特売の回数を増やしてみましたが、利益の改善にはつながりませんでした。

そこで、「主力商品の販売数量と利益が減っている背景」を、PEST分析で整理することにしました。

四つの視点で変化を整理する

視点 確認した変化 自社への影響として考えたこと
P:政治・制度(Politics) 新しい販売形態を始める場合に、確認すべき衛生管理や表示などのルールがある 配達や包装方法を変える際には、対応する条件と費用を調べる必要がある
E:経済(Economy) 仕入明細を見ると、原材料と包装資材の単価が上がっている 販売数量を戻しても、以前と同じ価格や特売の仕方では利益が残りにくい
S:社会(Society) 地域の人口統計では、少人数世帯の割合が増えている 家族向けの大容量パックが、今のお客さまの暮らしに合わなくなっている可能性がある
T:技術(Technology) 電話以外にも、注文フォームなどで事前注文を受ける仕組みが利用できる お客さまが利用できるなら、予約に合わせて製造し、売れ残りを減らせる可能性がある

この整理によって、「もっと多く売ればよい」という考え方だけでは、問題を解決しにくいことが見えてきました。

商品の量がお客さまの暮らしに合っていない可能性と、今の販売価格では利益を確保しにくい問題が、同時に起きていると考えられたからです。

分析から、確認と試行につなげる

そこで、次のことに取り組みます。

まず、店頭のお客さまに、誰が何人で食べるのか、量や価格に不満がないかを聞きます。同時に、商品の容量別の販売数や、原材料費、包装費、製造の手間、売れ残りを確認します。

その結果を踏まえ、一部の商品で少量パックを試します。ただし、小分けにすると包装費や作業時間が増えるため、売れた数だけでなく、利益が残るかまで確かめます。

予約販売についても、最初から大きなシステムを導入するのではなく、お客さまが使いやすい方法で小さく試します。予約が増えることで売れ残りが減るのか、受付や受け渡しの負担が増えすぎないかを見ます。

試した結果、購入客が増えても利益が減るのであれば、価格や作業方法を見直す必要があります。反対に、少ない製造数量でも売れ残りが減り、利益が改善するなら、その方法を広げる判断ができます。

PEST分析の役割は、少量パックや予約販売という答えを出すことではありません。これまでの商売と、今のお客さまや経営環境との間に、どのようなずれがあるのかを考えるきっかけをつくることです。

まずは、今困っていることと、周りの変化を並べてみる

最初から立派な分析資料を作る必要はありません。

「今、自社が困っていること」を一つ書き、その周りに、制度、お金の動き、暮らし、技術の変化を書き出してみてください。そして、それぞれが自社にどう関係しているのかを、社員や役員と話してみましょう。

その中から、影響が大きそうなものを一つ選び、事実を確かめます。そこまで進めば、分析は次の行動を考えるための材料になります。


あわせて読みたい:公募・企画書のヒント

その企画書、「採択」への出口は見えていますか?

「書き方がわからない」「ロジックが通らない」とお悩みの方へ。10年の実績を持つ未来文書が、あなたの企画書をプロの視点でブラッシュアップします。

無料で相談してみる