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企画書に感情の起伏を利用する方法

最終更新日:2024年07月31日
企画書に感情を入れる

企画書を書くのは、小説を書くのと似ています。読み手がどう感じるかを考え、感心や興味を引き出すという点では、企画書も小説も変わりません。良いとおもうけれど、何となく鼻につく企画書をまれに見かけますが、それは読み手の感情が考慮されていないためかもしれません。

感情の起伏の定型化

アメリカの作家、カート・ヴォネガットは、シカゴ大学大学院に在学していたときに修士論文提出しました。しかし、本人いわく、「とても単純であり、あまりにもこっけいな内容だと思われた」ため、受理されることはありませんでした。そのいきさつは、著書「パームサンデー」の中に書かれています。

このとき彼が発表した内容は、物語の定型化でした。方法は、物語をグラフに表すという方法です。まず横軸に物語の始まりから終わりという時間軸を取ります。そして、縦軸は上が幸運(Good fortune)、下が不運(Ill fortune)となります。

たとえば、「そう悪くない生活を送っていたが、不幸を経験し、それを克服したあと持ち前の才能と力を発揮したために前より幸せになった人を扱ったもの」(パームサンデーより)は次のようなグラフで表されます。

また、「大好きなものを発見して幸せになる人を扱っている。その男、または女は、いったんそれを失い、そのあと、今度こそ永久にそれを取り戻す。」という物語。これは次のようなグラフになります。

「あるアメリカ・インディアンの想像神話において、紙は人々に太陽を、つぎに月を、つぎに弓矢を、つぎにとうもろこしを・・・と与えるから、これは蓄積の物語」です。

そして、旧約聖書の物語は次のようなグラフになります。

突然の転落はアダムとイブがエデンの園から追放された場面を表します。

この他、カフカの『変身』も考察に入れています。

このようなグラフを作成した後、彼はシンデレラのグラフに言及しています。まずはグラフを見てみましょう。

上りの階段は舞踏会に必要なドレス、靴、馬車などを渡す場面です。そして、真夜中の鐘が鳴るとともに、いったん全てを失います。そして、王子と出会い、失ったものを全て取り戻したうえに、さらに大きなものを得るというストーリーです。2番目のグラフと似ていますが、初めに何も持っていないという点が大きく異なります。

カート・ヴォネガットは、これを創世神話と関連付けていますが、ポイントではないので割愛します。

このカート・ヴォネガットの研究は、のちにバーモント大学のアンドリュー・レーガンを中心とした研究チームの成果に繋がります。この研究チームは、1,700の物語の感情の起伏を分類し、6つの大きな曲線として表しました。横軸は物語の始まりから終わり、縦軸はsentiment scores(感情の得点記録)となります。

(Link URL : https://epjdatascience.springeropen.com/articles/10.1140/epjds/s13688-016-0093-1/figures/7

物語における感情の起伏を表したグラフ

これがそのグラフです。分類にはそれぞれ名前がついています。

SV1. Rags to Riches:立身出世型(上昇)
SV2. Man in a hole:穴に落ちた男型(下降-上昇)
SV3. Cinderella:シンデレラ型(上昇-下降-上昇)
(SV1). Tragedy:悲劇型(下降)
(SV2). Icarus:イカロス型(上昇-下降)
(SV3). Oedipus:オイディプス型(下降-上昇-下降)

SV2の穴に落ちた男というのは、カート・ヴォネガットが曲線の説明をするときに出した事例のことです。

https://www.youtube.com/watch?v=oP3c1h8v2ZQ

企画書を書くのに、この6つの分類を全て覚える必要はありませんが、ストーリーには感情の起伏があるということは認識するべきでしょう。

企画書における感情の起伏

感情の起伏というのは、心の揺さぶりという言い方に変えることもできます。企画書というのは、感動を呼ばないまでも、読み手に何らかの感情を起こさせる必要があります。「面白そう」とか「良さそう」といった気持ちを引き起こすことが重要だということです。そういう意味では、企画書も小説と同じ要素を持っていると言えます。

先の6パターンで言えば、最終的な結論が下降気味に終わる下の段よりも、最終的な結論が良い上段のパターンが企画書には当てはめやすいでしょう。また、こうした感情の起伏を利用する場合は、4段構成を考えると分かりやすいかもしれません。上記の中からシンデレラ型を見てみると、次のようになります。

1.物語の始まり:何もない状態からスタート

2.物語の展開:さまざまなものを得る

3.物語の転換:真夜中の鐘が鳴り、全てを失う

4.物語の結末:王子と出会い、より良い状態になる

これを企画書に落とし込むと、次のようになります。

1.問題提起:問題のある状態からスタート

2.実施内容:問題解決のための提案

3.追加提案:将来への展開を見据えた提案

4.結果:現実的な予算や将来像、実績予測など

感情の起伏をうまく企画書に落とし込むことによって、読み手の気持ちを揺さぶることができるようになります。3の追加提案は、リスク回避の方法でも良いでしょう。2であれこれと提案をした後のワンクッションという意味でとらえると分かりやすいかもしれません。

結論は現状よりも良い状態になっているイメージをはっきりとさせることです。数字による予測でも良いし、具体的な将来像でも良いでしょう。できるだけ具体的な形で見せることで、読み手が鮮明にイメージできるようになります。

感情の起伏は幅が大切

先の6つのパターンに戻ります。sv1と(sv1)の共通点は、起伏があまりないということです。成功にしろ失敗にしろ、物語の展開とともに徐々に動いていくもので、急に成功してしまったり、不幸になってしまうと、それ以上物語が続かなくなってしまうからです。

そして、それ以外のグラフは、アップダウンが大きいことが分かります。成功から挫折、挫折から成功までの落差が大きいほど、話として盛り上がるということが分かります。そして、上下はおおむね真ん中が中心になっていることも付け加えておきます。

企画書で言えば、問題提起の割に提案内容が壮大すぎたり、問題が大きすぎて提案内容が追い付いていない状態というのは、企画として無理があるということです。問題解決に対して適切な提案内容が必要というのは、こういう点からも見えてきます。

また、幅が大きければ大きいほど良いとはいえ、提案内容によってはそれほど大きな幅を持たせることができないパターンもあります。こういう場合は、将来像を大きく見せることで幅を持たせるなどの工夫をするべきでしょう。提案内容を第一歩として、将来大きな成果が期待できるという展開にすることで、起伏は大きくなり、企画書にも魅力が生まれてくるでしょう。

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